ログライフ!

ドキュメンタリーDVDやらの視聴ログを広く浅く残していくブログ

『シネマパラダイス★ピョンヤン』

 

シネマパラダイス★ピョンヤン

  ”シンガポールのドキュメンタリー映像作家であるジェームズ・レオンとリン・リーが、北朝鮮における映画制作の実態を克明に記録したドキュメンタリー作品。

製作年:2012年


 

 お初でございます、ななつぼと申します。最近はドキュメンタリーDVDを見るのが趣味なので、そのログを残していく予定です。
 
 
 ドキュメンタリーDVDが面白いのは、広く・浅く・短時間で美味しい部分を食べられるところですね。通常の人生ルートでは知り得ないところの知識を、まさにその世界で生きている人達を見ながら得ることができる。
 
 
 北朝鮮といえばモチロン馴染みの深い外国の一つですが、あまり内部事情を見ることはありませんな。ニュースなどを見て想像力を豊かに発揮しているだけで、実際は北朝鮮の町並み一つすら知らない。
 
 ちなみにこの作品は、ニューシネマパラダイスとはあまり関係がありませんね(当然)。
 
 

 

 

 『見どころ』

 北朝鮮で制作される映画とは、国が全て金を出して作っている国営放送みたいな映画だということになる、らしいわけです。つまりは将軍様が喜ぶように作るべし。
 
 共産主義的というかなんというか。いわゆる「真面目な」作品だけが映画として作ることを許され、放映され、国内で大ヒットされ、国の名誉となる。「おいおいそれじゃそのままやん?」って思いますが、やっぱその辺はそのまんまなんですよね、こういうのって。
 
 

 

「中学校の文化祭レベルのクオリティ」

 ドキュメンタリーは一人の女優のAさん(といっても素人レベルな)に焦点を当てて話は進むのですが、映画を制作している環境には驚くほど品質がありません。エキストラに毛が生えたくらいの『俳優』、体育館に天幕を張っただけの『舞台』、中学校の先生のような指示をだす『監督』。
 
 特に印象深いのは、エキストラが常に半笑いなことですかね。祖国が日本兵に踏み躙られて悔しい・・・そのシーンをので演じる10代くらいのモブ兵士達がずっとニヤニヤしている。
 この辺は中学校のクラス演劇の不真面目な生徒そのものってカンジで、「お前まじめに悔しがってる演技なんてすんなや~w」ってニヤけあってる連中にずっと「真面目に演技しろ!」と声を荒げる監督の姿は中学校の先生とカブる。
 
 
 
「和気あいあいとしつつも、悲壮感」
 女優のAさんが稽古しているシーンに入ると、みんなが集まって練習し、演技の先生が優しく傷つけないように「こうしたらいいんじゃないかな」と指導する。日本人にも馴染みの深い、みんなの笑顔が耐えない光景はやはり同じ東洋人なんだなという感覚を沸き起こさせます。
 
 こうなると誰が敵で、誰が味方なのか、ということがなんとなく気になってくる。Aさんの帰る家は小綺麗ですが、しかし日本でいえば一世代前のアパートといった感じの家。父親と母親はあまりにもくたびれ過ぎてる。
 恐らく中流以上の家庭なんでしょうが、至るところに閉塞感が立ち込めている。3人が一緒に映ると、父親と母親はカメラに目を合わせようとしない。Aさんはインタビュアーの問いかけに笑みを浮かべて答えているが、どこか運命を諦めたような面影を漂わせている・・・。
 
 
 
将軍様に振り回される人々が見えてくる」
 この作品では、いわゆる「一般人」に近い側の北朝鮮の人がたくさん見られます。生活レベルは顔に現れるとでもいいますか、何かこう、全員が老け込んでいる。世界に向けて挑発的な態度をとる政治姿勢とは裏腹に、そこに住む人々はあまりにも普通で素朴です。使う言葉は違うけど、どうしても馴染み深さを覚える。ただただ滲み出る圧倒的な「虐げられ」感に胸が詰まるような、なんといっていいか分からない感情が湧きます。
 
 
 
「シネマのことはどうでもいい」
 正直、作られてる映画のことはどうでもいいです。下手すりゃ映画を撮影するという名目で北朝鮮の人々を撮影するのが目的だったのかもしれない、という気にさえなる。
 ちょっと北朝鮮に対する見方が変わるというか。まぁ変わると言っても角度で言えば5度くらいですが。でもそれのおかげでいつか何かどこかで交錯するかもしれない。
 
 あの国では何もかもが茶番なんでしょう。しかし茶番でも人が大勢集まって利害関係が生まれれば、その茶番が現実となる。現実として成立してしまえば動いていかなざるを得ない。暗黒というか悪夢というか。ただただ日本人として生まれたことをラッキーと思うしか無い。
 
 
 
~感想~
 
 細かい部分では、『将軍様小咄』があったのが面白かったっすね。映画資料の見学に来た北朝鮮の若い俳優陣に、館長が一つの実話を伝えるシーンがそれです。
 
 『映画の仕上げ作業の際、将軍様が編集の手伝いにきてくださり、一仕事された後帰られた。その翌日、将軍様が仕上がった映像を観られた後にこうおっしゃった。「昨日観たものとは違う。映像の完璧さが失われた」編集者は言った「昨日から何も変えていません」すると将軍様はおっしゃった。「嘘をつくな」「コマを23コマカットしたのでは?」』
 
 1秒間とは30コマで、23コマとはほんの一瞬なわけですから、普通なら「はぁ・・・?」で話は終わるわけで。が、そこは将軍様。小咄はこう続く。
 
 『編集者が誰かにフィルムがカットされたことに気付き、切られた部分を数えてみると、それは正に丁度「23コマ」だった』
 
 聞いてた全員が「また吹かしとるわ」って顔をしてたのが印象的です。